認知症と口腔機能誌 [認知症と口腔機能研究会(JRSDOF)]
ISSN: 2760-277X (Online), Journal DOI: https://doi.org/10.63587/dof
Preface巻頭言
認知症と口腔機能研究会の誕生から,機関誌創刊号の発刊へ
Japan Research Society for Dementia and Oral Function is growing to give birth - the first issue of the official publication
会長 窪木 拓男 (認知症と口腔機能研究会)
President Takuo Kuboki, Japan Research Society for Dementia and Oral Function
DOI: https://doi.org/10.63587/dof.1-1.p1
認知症と口腔機能研究会(Japan Research Society for Dementia and Oral Function: JRSDOF)の設立準備会が開催されたのは2018(平成30)年8月9日である.場所は山手線田町駅近傍のキャンパス・イノベーションセンター東京であり,代表世話人である平井敏博先生(北海道医療大学名誉教授)と姜 英男先生(大阪大学名誉教授,ソウル大学招へい教授:2016~2021年)のお声がけにより,臨床系と基礎系の著名な研究者が初めて参集した.現会長を仰せつかっている窪⽊も,この先生方に研究会設立の構想を強く説かれ,お誘いを受けたのである.この設立準備会で,本研究会の発足が認められ,西道隆臣先生(理化学研究所チームリーダー),代表世話人の姜 英男先生,山本龍生先生(神奈川歯科大学教授)からこの分野に関する最新情報をご講演いただき,臨床と基礎,医科と歯科など学際性をメインテーマとする研究会のあり方,この分野の将来性や可能性について熱く語り合ったことを今でも鮮明に覚えている.
その後,第1回学術集会が,「認知症と歯科が交わるとき 基礎と臨床の融合 」というテーマで,2019年8月3日,4日に,老年歯科がご専門の水口俊介先生(東京医科歯科大学教授)のお世話により東京医科歯科大学歯学部特別講堂で開催され,基礎系セッション(口腔機能や歯周炎と認知機能低下の関係)と臨床系セッション(歯の喪失や栄養と認知機能の関係)を合わせた幅広い学際性を持つ現在の学術集会の構造が確立された.この後,コロナ禍に見舞われて,1年間開催を見合わせた後,第2回学術集会は,「歯科疾患起因性認知症の疫学的研究とその発現メカニズムの探求」をテーマに,Zoomミーティング形式で2021年8月7日,8日に開催された.本研究会に加えて,日本老年精神医学会,日本補綴歯科学会による「認知機能と口腔機能の相関に関する探索的研究(ECCO)プロジェクト」が開始され,道川 誠先生(名古屋市立大学教授)には,歯周病(炎症)や,歯牙欠損あるいは粉末・液体餌による咀嚼低下が認知機能低下に関与するこれまでの基礎研究のまとめとも言えるすばらしい特別講演をいただいたのを覚えている.また,診療ガイドライン委員会が設置され,システマティックレビューを開始したのもこの時期である.第3回学術集会は,「医科歯科連携による認知症に対する新たなアプローチ」をテーマに,同様にZoom ミーティング形式で2022年8月6日,7日に開催され,⽊本克彦先生(神奈川歯科大学教授)が企画された医科歯科連携シンポジウムや岩坪 威先生(東京大学教授)にご講演いただいたアルツハイマー病の疾患修飾薬のお話には強い感銘を受けた.第4回学術集会は,後藤哲哉先生(鹿児島大学教授)のお世話により,2023年8月19日,20日に鹿児島大学稲盛会館で行われ,認知症に関与する歯科基礎と臨床のカッティングエッジの研究が議論された.特に, 抜歯による三叉神経中脳路核の変性とアルツハイマー病の病態との関係に関する最新の知見を後藤先生がご発表され,また,認知機能低下に伴う摂食嚥下機能障害の関係を枝広あや子先生がご発表され,本会の学際性に磨きがかかったように感じたものである.第5回学術集会は,「認知症と歯科疫学研究の新たな潮流」をテーマに,2024年8⽉24⽇,25⽇に,東京医科⻭科⼤学⻭学部特別講堂に戻り,ハイブリッド開催で実施した.老年精神医学会の池田 学理事長の招待講演をはじめ,ECCO プロジェクトの進捗状況が笛⽊賢治集会長により紹介された.充実した基礎研究セッションも開催され,姜先生により,本研究会の根幹をなす基礎医学的な考え方がまとめられ,認知症と口腔機能の関係に関する優れた解説がなされた.この学術集会では,多くの一般口演を発表いただいたことも特筆すべきである.
2025年3月31日現在,本会会員は214名,世話人42名に達しており,この分野が多数の臨床家や研究者の興味を惹き付けていることは間違いがない.今年の第6回学術集会は,代表世話人のおひとりである平井先生のお膝元の北海道医療大学にて,會田英紀集会長に多大なるお世話をいただいて,2025年8月23日,24日に開催される予定である.
このように,本学術集会を年に一度重ねるごとに,提供される貴重な情報は急激に増え,多くの会員から,学術雑誌の発刊を期待されるようになった.初代編集委員長である佐原資謹先生(岩手医科大学教授)にはその準備に多大なるご苦労をかけた.一方で,創刊号発刊の期待は年を追うごとに大きくなるとともに,オープンアクセス(OA)ジャーナルの台頭とともに,出版界にも大きな著作権の変革の波が押し寄せることになった.J-STAGE へデジタル掲載する実績作りのためにも,和文混交誌として創刊号を至急発刊する必要があり,代表世話人である姜先生に編集委員長が引き継がれることになった.編集委員会細則や投稿規定の整備,OA 対策に多大なるご尽力をいただいた姜先生をはじめとした編集委員会の先生方,すばらしい論文をご寄稿いただいた著者の先生方,誌面のデザインをご担当いただいた福田印刷編集室の熊谷氏にも厚く御礼を申し上げたい.
今般こうして電子出版される認知症と口腔機能研究会誌は,研究者や国民に多くの貴重な情報を提供することが期待され,本創刊号の発刊にこぎ着けることができたことは本研究会の大きな成果である.一方で,本誌の出版を長年継続させるには,本会会員各位の情熱が必要不可欠である.本誌が,関係各位のご尽力により,末永く,世界の学術活動に貢献できることを願ってやまない.